仙台高等裁判所 昭和29年(ネ)223号 判決
控訴代理人は「原判決を取消す、訴外相沢包助(賃貸人)控訴人(賃借人)間の古川市古川字五壇原八番田一反三畝二十八歩に関する賃貸借契約につき被控訴人が昭和二十七年四月三十日にした解約許可処分を取消す、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。
当事者双方の事実上の主張は、控訴代理人について、原判決が、宥恕すべき事情がないのに小作料を滞納したという小作契約解約許可申請の事由以外の事実に基いて本件の解約許可処分を維持したのは当事者の主張しない事実を判断したものであつて違法である、と述べたほかは原判決事実摘示と同一であるからここにこれを引用する。(証拠省略)
三、理 由
当裁判所は新に次の理由を附加するのほか原審と事実の確定並びに法律判断を同じくするから原判決理由中の記載をここに引用する。
被控訴人が賃貸人相沢包助、賃借人控訴人間の古川市古川字五壇原八番田一反三畝二十八歩に関する賃貸人申請に係る賃貸借契約解約許可処分をしたのは次の二個の事由、即ち
(1) 賃貸人たる訴外相沢包助は田一町三反余、畑二反四畝を所有しているがそのうち自分で耕作しているのは畑一反二畝に過ぎず生活に困窮しているものであるところ更に本件田地を耕作する能力は十分であるに対し賃借人たる控訴人は田一町八反七畝、畑一反八畝を耕作し家族十名中二名が耕作に従事して居り生活状態を比較すると相沢より裕福であること。
(2) 控訴人の賃借料の滞納はその金額から考え信義に反するものと認められたこと。
に基くものであることはそのつとに主張しているところ(原判決三枚目裏七行目以下、記録四一丁参照)である。
而して農地の賃貸借は原則として解約し得ず、賃借人が宥恕すべき事情なきに拘らず小作料を滞納する等信義に反した行為をした場合とか土地使用目的の変更又は賃貸人の自作を相当とする場合その他正当の事由ある場合に限つて特別に解約を許しているのであり(本件許可処分当時施行中の農地調整法第九条)、特に賃貸人が自作を相当とするか否かの判定に当つては解約許可処分をする者が当該賃貸人の自作を為すに必要な経営能力、施設等を有するや否、当該賃貸人の自作により当該農地の生産が増大するや否、賃貸借の解除、解約等により当該農地の賃貸人の相当な生活の維持が困難となることなきや否等の諸般の事情を考慮することを要するとされている(右同農地調整法施行令第十一条)のであつて、かような事由によつて解約許可処分をしたことについては処分者たる被控訴人が主張立証の責任を負担することはもとよりのことであるというべきところ、成立に争のない甲第一証の一、原審証人相沢包助、篠恒彦の証言を綜合すれば、被控訴人はその主張の前記二個の事由を勘案して本件許可処分をしたものであることが認定できる。従つて控訴人の賃料滞納が宥恕すべき事情にあり賃貸人に対する不信行為とは云えないとしても(即ち被控訴人が斯様な解約事由ありと認めたことが誤りであつたとしても)賃貸人たる相沢包助において自作を相当とする要件を具備しているものと認められる限り被控訴人の本件許可処分に違法はないものといわねばならぬ。而してかような事由ありと認め得ることに関して当裁判所も亦原審と事実認定を同じくするのである(ただ原判決理由においてはこの二個の事由の相互関係について明確を欠く憾みはあるが、かような趣旨であることは判文を通読せば充分窺うことができる)。
従つて被控訴人のした本件許可処分には結局違法なくこれが取消を求める控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であつて本件控訴は理由がない。
よつて民事訴訟法第三百八十四条、第九十五条、第八十九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 板垣市太郎 檀崎喜作 沼尻芳孝)